校長室だより10・・・範を示す
10月のある休日のことです。雨が降っていました。用足しの途中で昼食をとろうと飲食店に入りました。傘をもっていたのですが,あいにく傘立てはなく,濡れた傘を入れるためのビニル袋が入り口にありました。ビニル袋に入れた傘を持って店内に入り食事をしました。さて,食事を終えて店を出ようとしたときに,二人の女性とすれ違いました。傘を持っていなかったので(もう,雨は止んだのかしら?)と思い外を見ますとかなり激しい雨が降っています。二人の女性は濡れていないし,少し不思議な気持ちで出入り口に向かいました。ビニル袋を返すところで,私はがっかりする光景を見ました。ビニル袋を入れる細長い入れ物に,濡れた傘が二本,無造作に差してあったのです。二本の傘が何とか入るほどの大きさの入れ物です。傘を入れたときに何か感じなかったのでしょうか?
4月のある雨の日に,昇降口の子供たちの様子を見て感心したことがあります。昇降口まで差してきた傘をとじ,他の子供の邪魔にならないところで水を落とし,くるくると細く巻いてホックで留めている子供の姿です。多くの子供がしています。当たり前のようですが,なかなかできないことです。「これは,すばらしい!」と感心した私は,他の子供たちにも教えようと昇降口で傘の閉じ方を一緒に行いました。学校のような多くの人々が集う場所や社会では,いろいろな約束やきまりがあります。みんなが迷惑にならないような気遣い,思いやりが必要となります。それらは,「しつける」という言葉でも表現されます。「躾」という漢字はすてきな漢字だと思います。人から言われることなく,自らの意志・気持ちが所作となって自然体で表れるその姿は美しいものです。傘の水気をとり,手を濡らしながら傘をくるくると丸めホックで留める・・・この所作をさりげなくできる栗生小の子供たちの姿は,「美しい姿」です。
私が出会ったあの二本の傘・・・くるくると丸めるでもなく,また,傘立てでもないところに無造作に入れられた傘・・・範を示すべき大人の行動としては残念です。似たような行為をたびたび目にします。落合駅前の交差点はL字に横断すべきなのに対角線上に横断する人,横断歩道では自転車から降りて押して歩くところを歩行者の間を縫うように自転車を飛ばす人,信号機がついた横断歩道が目の前であるにもかかわらず車の往来を縫うように足早に車道を走り渡る人・・・子供は,大人の背中を見て育ちます。正しいことを子供だけに要求するのではなく,未来を担う子供たちの範となる行動をしていかなければと改めて思った雨の日の一こまでした。
3年2組の子供たちが先生と一緒に育てた菊の花です。(寄り添うように首をかしげた姿が,かわいい子供たちの姿と重なります。)・・・11月6日発行