主体的に学ぶ姿を引き出したい   

 かつて,タブレット端末が導入され始めた頃に参観した授業で,とても印象に残っている授業があります。「ことわざを写真で表現する」という4年生国語の授業です。授業の内容は,「絵に描いた餅」などのことわざの意味を表す写真の撮影に,グループごとに挑戦するというものです。「絵に描いた餅の意味など知っているよ!」と,自信ありげな子供たちは,楽しげに協力しながら,タブレット端末を用いて,紙に描いた餅をおいしそうにほおばる写真を撮影し,満足げに発表していました。この時点では,ほぼ,どのグループも自分たちの失敗に気づいていないのです。

 そこで,先生は,「その写真が本当にことわざの意味を表す写真になっているのか?」と問いかけました。子供たちが,なんとなく思っている言葉の意味を,確認せざるを得ないように働きかけたのです。さっそく子供たちは,手元に置いてある国語辞典を使って,ことわざの意味を調べ始めました。どのように撮影すると,本当にそのことわざの意味を表すことができるのかを,辞典で確かめながら考えを深めたのです。当然,「絵に描いた餅をおいしそうに口にしたのでは,意味を表していないのではないか」ということに気づくようになります。すると,撮影される写真は,喜々として紙に描かれた餅を食べる様子から,紙に描かれた餅を目の前にして,困惑したり,悲しがったりする表情の写真へと変化していったのです。

 この授業のよいところは,子供たちは,誰かに「調べなさい」と指示されて調べたのではなく,本当に調べたくなって調べ,調べたことを基に考え,伝えたいと思って伝えたところにあると思っています。実際に授業を参観していたのですが,子供自身が「えっ,それってどんな意味だったんだっけ?」と思った瞬間の表情がとても印象的でした。目的を持って主体的に調べ,自分たちなりによく考えて写真での表現に取り組む。そんな子供たちの生き生きとした表情が,今でも忘れられません。

 ことわざの意味をどれだけ覚えられるか,それをテストで試すなら,ひたすら「覚える」ことに力を注いだ方がよいかもしれません。でも,子供たちにとって,将来にわたって大切なのは,「学ぶって楽しい」「学ぶことは大切だ」「調べるって面白い」「もっとやってみたい」といった,学びの原動力となるような気持ちを抱かせることだと考えています。そのためには,課題への取組みが作業的になっては良くないし,成功だけではなく,適度な失敗も大切です。学習の意義や面白さを実感できるような授業が展開できるよう,我々教師の側も,子供たちの主体的な姿を引き出せるような授業の改善に努めていきます。

(文責:校長)
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