なぜ本を読むのか?
本校の協働型学校評価の重点目標は,「学校,家庭において,たっぷりと時間を確保し,読書に親しむ」です。「協働型」の目標なので,学校・家庭・地域それぞれが当事者として,目標到達を目指した取組を進めていくことになります。学校では,クロームブックなども活用しながら読書の記録をためていき,そこから「対話」が生まれるような授業も試みています。PTA本部役員の皆さんは,昇降口の吹き抜け部分に,切り絵を用いた「シルエットクイズ」を製作し,子供たちの本への興味を高めようとしてくれています。
でも,なぜ,「読書」なのでしょうか。「なぜ本を読むのか?」と子供に尋ねられたら,皆さんは,どのように答えるでしょうか。なんとなく,「ゲームしているよりは,本を読んでいた方が安心」みたいに思うこともありますよね。逆に,「いくら読書をしたって,豊かな体験にはかなわないのでは?」と思うこともあるかもしれません。
直接的な体験が大事なのか,読書が大事なのかといった話は,もちろん,どちらかといった話ではないのですが,最近読んだ本に,なるほどと納得できる話がちりばめられていました。それは,哲学者で教育学者でもある苫野一徳(とまの・いっとく)さんが著した『未来のきみを変える読書術―なぜ本を読むのか?』という本です。この本の中で,苫野さんは,「直接経験については注意しておきたいことがあります。」と言っています。それは,「一般化のワナ」なのだそうです。「自分が経験したことを,まるですべての人にも当てはまることであるかのように,過度に一般化してしまう思考のワナ」があって,日常生活のいろいろなところに,そのワナは,潜んでいるというのです。例として,「学校の先生なんてみんな○○だ」とか,「これだから日本人は,△△だ」といった言い方を挙げています。そのように,狭くなりがちな,わたしたちの見方や考え方を広げてくれるのが読書なのでしょう。苫野先生は,「読書は,そんなわたしたちの視野をうんと広げる役割を果たしてくれます。」と言っています。
さて,少し,読書を離れて考えてみたいと思います。狭い経験から一般化してしまうようなことは,子供にもあるわけです。当たり前ですが,子供には,様々な経験が不足しています。「あの人は,こういう人だ。」「これは,こういうものだ。」といった思い込みや決めつけで嫌ってみたり,あきらめてしまったりということが当然のようにあるわけです。経験が増えていけば,もっと違った見え方になるのかもしれませんが,直接経験できることには限りがあります。苫野先生は,「読書もまた一つの経験なのです。直接的な経験を広げてくれる豊かな経験なのです。」といっています。確かに,広い視野で様々な物事を見たり,周りの人への理解を深くして,よりよい関係を築いていったりする上で,読書は,とても有用なのだと思います。
子供たちには,ぜひ,幅広い読書経験を積んでほしいと思っています。そして,個人で読むだけではなく,読書経験について「対話」を通して,交流してほしいと思っています。協働型学校評価の重点目標達成のための手立てとして,「読書を介した「対話」の推進」を掲げているのは,読書経験の豊かな広がりを願っているからなのです。
今回紹介した本には,「ネットじゃだめなの?」といった問いに対する考えや,具体的な「読書術」などが書かれていてとても興味深いです。ぜひ,親子で一緒に読んでみて,対話をしてほしいです。
(文責:校長)
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『ちくまQブックス 未来のきみを変える読書術 なぜ本を読むのか?』
苫野一徳著 2021年 筑摩書房
でも,なぜ,「読書」なのでしょうか。「なぜ本を読むのか?」と子供に尋ねられたら,皆さんは,どのように答えるでしょうか。なんとなく,「ゲームしているよりは,本を読んでいた方が安心」みたいに思うこともありますよね。逆に,「いくら読書をしたって,豊かな体験にはかなわないのでは?」と思うこともあるかもしれません。
直接的な体験が大事なのか,読書が大事なのかといった話は,もちろん,どちらかといった話ではないのですが,最近読んだ本に,なるほどと納得できる話がちりばめられていました。それは,哲学者で教育学者でもある苫野一徳(とまの・いっとく)さんが著した『未来のきみを変える読書術―なぜ本を読むのか?』という本です。この本の中で,苫野さんは,「直接経験については注意しておきたいことがあります。」と言っています。それは,「一般化のワナ」なのだそうです。「自分が経験したことを,まるですべての人にも当てはまることであるかのように,過度に一般化してしまう思考のワナ」があって,日常生活のいろいろなところに,そのワナは,潜んでいるというのです。例として,「学校の先生なんてみんな○○だ」とか,「これだから日本人は,△△だ」といった言い方を挙げています。そのように,狭くなりがちな,わたしたちの見方や考え方を広げてくれるのが読書なのでしょう。苫野先生は,「読書は,そんなわたしたちの視野をうんと広げる役割を果たしてくれます。」と言っています。
さて,少し,読書を離れて考えてみたいと思います。狭い経験から一般化してしまうようなことは,子供にもあるわけです。当たり前ですが,子供には,様々な経験が不足しています。「あの人は,こういう人だ。」「これは,こういうものだ。」といった思い込みや決めつけで嫌ってみたり,あきらめてしまったりということが当然のようにあるわけです。経験が増えていけば,もっと違った見え方になるのかもしれませんが,直接経験できることには限りがあります。苫野先生は,「読書もまた一つの経験なのです。直接的な経験を広げてくれる豊かな経験なのです。」といっています。確かに,広い視野で様々な物事を見たり,周りの人への理解を深くして,よりよい関係を築いていったりする上で,読書は,とても有用なのだと思います。
子供たちには,ぜひ,幅広い読書経験を積んでほしいと思っています。そして,個人で読むだけではなく,読書経験について「対話」を通して,交流してほしいと思っています。協働型学校評価の重点目標達成のための手立てとして,「読書を介した「対話」の推進」を掲げているのは,読書経験の豊かな広がりを願っているからなのです。
今回紹介した本には,「ネットじゃだめなの?」といった問いに対する考えや,具体的な「読書術」などが書かれていてとても興味深いです。ぜひ,親子で一緒に読んでみて,対話をしてほしいです。
(文責:校長)
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『ちくまQブックス 未来のきみを変える読書術 なぜ本を読むのか?』
苫野一徳著 2021年 筑摩書房
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