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研究主題 |
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互いの立場や考えを尊重しながら言葉で「伝え合う力」を高めるための指導法の研究
―国語科における言語活動の工夫を通して(1年次)―
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主題設定の理由 |
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(1) |
教育の今日的課題から |
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21世紀は知識基盤社会の時代であると言われ,新しい知識・情報・技術の価値が高まり,グローバル社会に対応した「生きる力」を育むことの重要性が増してきている。
このことを踏まえ,昨年度から全面実施された新学習指導要領においては,基礎的・基本的な知識及び技能を習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力等を育むとともに,主体的に学習に取り組む態度を養うため,言語活動を充実することが求められている。仙台市教育センターにおいても,授業づくりの視点として,「言語活動の充実を意識した授業づくり」を掲げている。
このように,学習活動の基盤となる言語に関する能力の育成のために,様々な言語活動を工夫してその充実を図っていくことは,教育の今日的課題となっている。
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(2) |
本校の教育目標から |
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本校の教育目標である「豊かな心と確かな力を持ち,力強く未来を生き抜く児童の育成」と,目指す児童像「思いやりのある子ども」「よく考え工夫する子ども」「健康でたくましい子ども」の具現化,協働型学校評価の重点目標である「自分の思いや考えをしっかり表現できる子ども」の達成を図るために,言語の教育の中心となる国語科に焦点を当て,言語活動の工夫・充実を図りながら校内共同研究を推進していく。
特に,協働型学校評価の重点目標については,全職員で共通理解を図りながら改善活動に取り組んでいくとともに,家庭にもよりよい言語環境づくりへの協力を働きかけていくようにする。
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(3) |
児童の実態から |
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昨年度の仙台市標準学力検査結果から,本校の校内平均正答率は,国語・算数ともに全学年において,基礎的知識と応用力のいずれも期待正答率と仙台市平均正答率を上回った。また,正答率が期待正答率と同等以上の児童の割合がどの学年も8〜9割と高く,仙台市平均(7〜8割)を上回った。
一方,国語または算数いずれかの平均正答率が50ポイントを下回った児童に目を向けると,算数と比べて国語の正答率が極端に低い児童が多く,国語力の向上が課題となっている。特に,国語の「書く能力」の低い児童は,学習への関心・意欲・態度も低く,全教科で応用力の低い傾向が見られる。また,学習状況調査の分析からも,自分の考えを表現することが苦手な児童は,成績についてマイナスの相関が見られる。
昨年度の算数の研究においても,自分の考えを説明することに苦手意識を持つ児童の存在が課題となった。また,普段の授業の様子からも,自分の考えに自信が持てずに発表に消極的な態度を示す児童や,伝えたいことの要点をまとめられずに最後まではっきり話せない児童,適切な言葉を選べずに自分の言いたいことを相手に伝えきれない児童などが,少なからず見受けられる。
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(4) |
教師の願いから |
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本校では昨年度まで,算数科の研究を3年間積み重ねてきた。その中で,問題解決型の授業づくりを工夫したり,算数的活動や言語活動を意図的に取り入れたりするなどして,授業の質的改善を図ってきた。
しかし,ペアやグループなど小集団での話し合いのさせ方や,学習内容に応じたグループ編制,全体の練り合いの場面での発表のさせ方などに課題が残った。また,自分の考えを発表するだけで満足することなく,友達の考えとの共通点や相違点を見つけて比較し,それを説明する力を身に付けさせていくことも,学び合いを深める上での重要なポイントとなると考える。
そこで,今年度から,国語科を研究教科として言語活動を工夫し,互いの立場や考えを尊重しながら言葉で「伝え合う力」を高めていくことで,他の教科・領域や日常生活においても生きて働くような言語能力の向上を図っていきたいと考える。
以上の設定理由により,本主題を設定した。
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研究の基本的な考え方 |
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(1) |
「互いの立場や考えを尊重しながら」とは |
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自分の意見に固執せず,また自らの意志に背いて同調することなく,他者の意見も聞き入れながら全体として最適な結論を出そうとするなど,自他それぞれの差異を尊重して理解し合い,ものの見方や考え方を広げ深め合おうとする態度。
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(2) |
「伝え合う力を高める」とは |
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人と人との関係の中で互いの立場や考えを尊重し,一人一人の児童が言語の主体的な使い手として,相手,目的や意図,場面や状況などに応じて,適切に表現したり正確に理解したりする力を高めること。
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4 |
研究のねらい |
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国語科における言語活動の工夫・充実を通して,互いの立場や考えを尊重しながら言葉で「伝え合う力」を高めるための学習活動のあり方を探る。
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研究の視点と手立て |
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(1) |
伝え合う力を高める言語活動の工夫 |
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@ねらいに応じた言語活動の位置付け
A目的意識・相手意識が明確となるような言語活動の設定
Bペアやグループなど学習形態の工夫
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(2) |
言語力の基礎を育む日常的取組の工夫 |
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@読解力の向上を目指した音読練習への取組
A発表力の向上を目指した書く活動への取組
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研究の方法 |
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(1) |
授業研究 |
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@全校授業は,低・中・高学年部から1コマずつ年3回実施する。授業検討会を含めて全職員が参加する。
A全校授業には,仙台市教育センターの「授業づくり訪問」1コマを含む。
B全校授業を行わない学年は,学年部授業を実施する。指導案の配布と授業参観の呼びかけは全職員に行う。
C全校授業と学年部授業の授業者以外の教員も,研究授業を行う。
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(2) |
理論研究 |
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書籍やインターネット等で研究に役立つ情報を収集し,活用する。
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(3) |
研究集録の作成 |
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実践の記録や研究の成果・課題等についてファイルにまとめ,研究集録とする。
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成果と課題 |
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研究の視点
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○ 主 な 成 果
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▲ 課 題(改善策)
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□視点1
伝え合う力を高める言語活動の工夫 |
○ |
各学年の研究授業では,単元を貫く言語活動を位置付けて学習の見通しをしっかりと持たせたことにより,児童は目的意識や相手意識を明確にして言語活動に取り組むことができた。
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○ |
ペアやグループなど学習形態を工夫し,役割を交替しながら話合いや発表の経験を積み重ねたことで,児童は自信をもって主体的に言語活動に取り組むようになり,伝え合う力が高まった。
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○ |
どの学年も,話合いや発表練習の場面で,モニターする言語活動を取り入れた。児童は,他者の話合いや発表を客観的に観察してワークシートにチェックしたり良かった点や改善点を伝え合ったりすることで,学習のポイントをより具体的に理解することができた。
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○ |
国語科で育まれた伝え合う力は,他の教科・領域でも発揮された。例えば,総合的な学習の時間において,調べたことを聞く人に分かりやすくプレゼンテーションしたり,ゲストティーチャーの話を聞いて当を得た質問や感想を発表したりする姿が見られるようになった。
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▲ |
ねらいに応じて言語活動をより効果的に行うためには,教材の系統性を十分に把握しておくことが重要となる。そのために,学習指導要領と教材との関連を一覧にしたマトリックスを活用して,年間指導の見通しをしっかりと持つようにする。また,他学年の教科書に目を通したり,他学年の授業を積極的に参観したりして,学年間の系統性にも理解を深めていくようにしたい。
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▲ |
研究授業では,手立てをあれこれ工夫するあまり,盛りだくさんの内容になってしまいがちである。限られた授業時間内で言語活動をより充実させるためにも,授業構想の段階で指導の重点を明確にし,児童の実態を踏まえて活動内容の精選を図るようにしていきたい。
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▲ |
授業評価を重視し,児童の学びの姿を見取って指導・支援の妥当性を振り返り,日々の授業改善に役立てるように努めていく。特に,音声言語である「話すこと・聞くこと」の評価では,具体的な評価場面をあらかじめ決めておき,記録に残す評価を意図的・計画的に蓄積して観点別評価を進めていくなどの工夫を図りたい。
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□視点2
言語力の基礎を育む日常的取組の工夫 |
○ |
単元のねらいに応じてノート指導やワークシートを工夫し,意図的に書く活動を取り入れたことで,自分の考えを整理し自信をもって発表することができた。
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○ |
下学年では,週末課題として日記や作文に継続的に取り組ませたことで,書く力が伸びてきた。上学年では,校外学習やゲストティーチャーを招いての授業などで,熱心にメモを取る姿が見られた。
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○ |
全校で様式を統一した家庭学習カードを活用することで,音読練習や家庭学習に日常的に取り組ませることができた。話合いの単元では,グループごとに教材文の役割読みをさせたことで,話合いの仕方を体験的に理解させることができた。
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○ |
各学年ごとに作成した話し方・聞き方等の掲示物は,身に付けさせたいポイントを児童に意識付けるのに役立ち,全ての教科・領域の言語活動で日常的に役立てることができた。
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○ |
読書環境の整備として,学校図書館から学級文庫へ配本し,朝の読書活動に役立てることができた。また,読み聞かせボランティアによるお話会を定期的に行い,読書への関心を高めることができた。
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読解力の向上を目指した音読練習への取組や,発表力の向上を目指した書く活動への取組は,指導者が1年間の見通しを持って意図的・継続的に取り組んでいくようにする。
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思考力や判断力を高めるためにも,書く活動を意図的に学習過程に位置付け,考えを練り直したり自問自答したりする時間を確保していきたい。そうすることで,児童一人一人の考えがより明確になり,発表や話合いの内容がさらに深まるものと考える。
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互いの立場や考えを尊重しながら伝え合う力を高めるためには,自分の考えに執着せず,友達のよい考えを取り入れられる思考の柔軟性が必要となる。協働的な学びの場を意図的に設定していくとともに,自分づくり教育とも関連させて「かかわる力」(人間関係形成力)などの「たくましく生きる力」を育んでいくことで,言語活動をより充実させていきたい。
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学年に応じて国語辞典や漢字辞典を積極的に活用し,言語力の基礎を育んでいく。また,デジタル教科書などのICTや新聞などのメディアの効果的活用を図り,言語環境をより豊かなものにしていく。
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