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順と健太は大の仲良しです。家が遠いので，放課後はあまり遊ぶことができませんが,クラスも同じ，３年生のときからスポーツ少年団に入ってサッカーも一緒にがんばっています。	夏休み間近のある日，ぼくたちのクラスでは，メールを打つ練習をしました。先生が，メールをするときの約束を黄色いチョークで黒板に書きました。１　相手の名前と自分の名前を必ず書く。２　思いやりのある言葉で書く。３　返事は気長に待つ。（なんだ。手紙とあんまり変わらないな。）とぼくは思いました。	順君もぼくも家にパソコンがあるので，メール交換をしようと約束をしました。次の日，順君とぼくはさっそくメールアドレスを交換して，家のパソコンからメールを送ってみることにしました。ぼくは，大急ぎで家に帰り，順君からメールが届くのをわくわくしながら待ちました。	初めてのメールが届いたときはうれしくて，まだ文字がよく読めない弟の康太にまで教えました。順君とますます仲良しになれたような気がしました。テストメール健太君へこれで好きなときにメールで連絡が取れるね。夏休みは，遊ぶ約束やサッカーに行く約束もメールでしよう。順より夏休みに入ると，ぼくたちは毎日のようにメールを使ってプールに行く約束やサッカーに行く約束，遊ぶ約束などをしました。

夏休みに入って１０日ほどたったある日の午後，５年生の弘くんが学校の裏の森で見つけたというクワガタを見せてくれました。夏休みに入る前に順君と一緒にあちこち探し回ってもとうとう見つからなかったオオクワガタです。	（すごいや。順君に教えなくちゃ。明日さっそく森に行ってみよう。今度こそクワガタを見つけるぞ。）ぼくは，大急ぎでメールを送りました。	順君へ学校の裏の森で弘君がクワガタを見つけたんだ。あんなに探したのに見つからなかったオオクワガタだよ。明日，１０時に学校で待ち合わせて探しに行こう。返事待ってるよ。健太より順君の喜ぶ様子を想像しながらぼくは返事がくるのを待ちました。ところが順君からは夜になっても返事がきません。（どうしたんだろう。いつもすぐに返事をくれるのに。）そう思いながら，ぼくは夜遅くまで何回もメールをチェックしました。　次の朝も順君からのメールはきていませんでした。	（何だよ。順君。約束はメールでしようって言ったくせに，何でメールをくれないんだ。）こんなときに限って，お手伝いをさぼっていたことをお母さんに注意されるし，ぼくはだんだん腹が立ってきました。待ち合わせの時間を過ぎても順君からのメールはきていません。ぼくは，思わずいらいらした気持ちを順君へのメールにぶつけて送信してしまいました。

ばかやろう。遊ぶ約束はメールでしようって言ったのは順君だぞ。信じられないよ。せっかくクワガタのいる場所がわかったのに。もう順君とメールなんかしないぞ。	その日の夕方，（もうメールなんてしないぞ。）と思いながらも，ぼくはメールを開いてみました。	そして，順君のメールを見てはっとしました。	健太君へせっかく虫取りに誘ってくれたのにごめんね。ぼくも行きたかったよ。きのう，福島のおばあちゃんがけがをしたって電話が入って，午後からお母さんとお見舞いに行ったんだ。夏休みだからいいだろうってことになって，そのまま泊まってきちゃったんだ。約束はメールでしようなんて言ったからこんなことになっちゃったんだね本当にごめんね。　　　　　　　　　　　　　　　　順より

健太は，順君のメールを何度も何度も読み返し，順君へメールを打ち始めました。	順君へ