高砂中学校は,東日本大震災で,校舎1階および体育館などの施設が激しい揺れと津波により被災した。学区である中野・蒲生・岡田地区の津波による浸水被害は甚大で,震災時の在籍生徒621名中,全壊家庭は51名,半壊72名,床上浸水191名であった。震災の影響は現在も続き,仮設住宅(見なし仮設含む)からの通学生徒は27名,被災による学区外通学生徒は56名である。教育設備の被害も大きく,震災後から平成252月までの間,体育館が使用できず,集会や生徒総会を校庭で行い,卒業式や入学式など学校行事を市民センターや近隣小学校を借用して実施した。

 このような時,長野県伊那市立東部中学校から本校に,天然記念物である「タカトオコヒガンザクラ」が2本寄贈された。津波の塩害により本校のサクラが枯れたという報道を生徒会が聞き,同市教育長に嘆願し実現させたという。サクラの寄贈は,両校をつなぐ心の絆として,「感謝の気持ち」と「震災を前向きに見つめる」ことのシンボルとなっている。

また,体育館が復旧した折,地域の方々が復旧イベントを実施した。生徒はお世話になった地域の方々への感謝の気持ちと共に,自分の学校の体育館で卒業式ができる,という喜びに満ちた。この時生徒が述べた「当たり前のことが当たり前にできる有り難さ」「地域に笑顔と元気を届ける」という2つの言葉が,現在の生徒の心にも深く刻み込まれている。

一方,震災直後から支援チームによる生徒への「心のケア」が継続してい。生徒は学校行事や部活動に熱心であり,元気にあいさつする習慣も身に付いている。しかし,現在も震災時の体験から,地震や津波に関連した授業や,防災学習に参加できない生徒,防災訓練の際に体調不良を訴える生徒も見られ,心のケアの充実は本校の大きな課題のひとつである。そこで,生徒一人ひとりの被災状況を理解し,SCやさわやか相談員,保健室との連携や授業内容の工夫など,日常的に様々な配慮を行いながら教育活動を行っている。

 

2  今年度の防災教育方針

前述のような経緯を踏まえながら、本校では「心の育み」を軸にしながら(1)(3)の「3つの柱」のもと、防災教育活動を行っている。


学校防災教育方針 
3つの柱

具現化に向けた重点目標

5つのキーワード

(1) 小学校や地域と連携した防災体制     

地域の復興につながる主体的な防災活動の推進

地域への貢献

人の力になれる

自分を守る

(2) 新たな学防災教育の推進    

 

教科・領域を通した防災学習に向けた年間指導計画の作成と「高砂中防災ノート」の活用

自分を守る

正しい知識と情報

(3) 復興を通した地域貢献交流活動

地域や交流先との連携や活動の推進

人の力になれる

多くの交流

地域への貢献


地域と連携した防災体制

町内会や幼稚園と連携した防災訓練活動

 612()に中学校区三町内会と連携した地域一斉防災訓練を実施した。地震の後の津波を想定した訓練を行い、町内会の方々144名が本校に避難した。また、町内会ごと実際の避難場所となる各教室や備蓄倉庫などの確認を行った。町内会には高齢者の方も多数参加し、本校JRC委員会生徒18名が指定避難場所への誘導や防災グッズ配布などの活動を行った。 

    地域の方の避難誘導を行うJRC委員   幼稚園の子どもたちにお話しするジュニアリーダー
◎生徒の感想◎
 「私は今日の訓練で階段の誘導をしました。階段を登るのが大変な方のお手伝いや、元気にあいさつをすると、来る人全員が笑顔で「おはよう」「おつかれさま」と優しく話してくれて、とてもうれしかったです。災害が起きたときに、中学生が地域に役立つことが出来ることがわかりました。(2年女子)

10月10日(金)には、近隣の幼稚園と連携した防災訓練が行われた。津波避難を想定に園児約60名が本校屋上まで避難した。本校からはジュニアリーダー資格生徒4名が参加し、園児の避難誘導のお手伝いや、避難時の心構え「お(押さない)・は(走らない)・し(しゃべらない)を紙芝居で準備し、当日は園児にわかりやすく説明した。

◎生徒の感想◎

「今回、幼稚園の子どもたちと接して、避難の心構えについてゆっくり話したり説明したりすることが出来ました。とても楽しかったです。みんなに「お・は・し」を覚えてもらえてうれしかったです。今後の活動に生かしていきたいと思います。(3年女子)

 

A小学校や地域と連携した四小中合同引渡し訓練活動

1017()に中学校区内の三小学校(中野小・岡田小・鶴巻小)と合同で「小中四校合同引渡し訓練」を行った。引渡しカードは平成25年度から運用を開始したが、カードを使用した小中合同の訓練は今回が初めてであった。今回の訓練では保護者202名が参加した。合同引渡し訓練の成果として、教職員と保護者が引渡しカードを活用できたこと、小・中学校に兄弟姉妹がいる家庭が、引き受け時のタイミングを実際に経験できたことなどが挙げられる。また、中学校区の三町内会や交通安全協会による交通誘導の協力など,地域と連携した訓練活動を行うことができた。また、ジュニアリーダー資格生徒やJRC講習受講生徒などが、防災ボランティアとして会場の誘導などの活動を行った。津波警報発令の際には、本校より海岸部の地区は本校を避難場所としており、有事に備えて毎年定期的に訓練を実施している。そこに中学生が訓練に関わることで、生徒自身が避難経路や方法などを知る「自分を守る」力と、生徒たちが地域の方々を支えることで「人の力になれる」「地域に貢献している」という実感が深まった。


   引渡しカードを使用した引渡し訓練の様子              地域一斉防災防災活動会議での話し合い

B地域一斉防災活動会議

今年度は三町内会と学校、関係機関(消防局・区民生活課・保険年金課) などが、地域防災の課題や今後の活動などについて意見交換を行った。また学校や周辺地区まで津波の被害を受けた経験から、震災の教訓を生かしてどのように地域防災に向けたシステム作りを行うか、関係機関と協力しながら、地域防災マニュアル作成部会を立ち上げ、年3回作成会議を進めることができた。

グラフ1は防災学習の終了後に実施した生徒用アンケートの結果である。「災害が起きたときに身を守る行動が出来ると思う」の質問項目に対して、そう思う(40)、どちらかといえばそう思う(45)であった。一方でわからない(10)回答が約1割を占めて
いた。また、「防災活動や地域との交流活動に参加している」の質問項目に対しては、そう思う
( 22)、どちらかといえばそう思う(32)であった。

生徒自身が災害の際に「自分の身を守る力」に対して85%が肯定的な回答をしており、日頃の防災活動、防災学習の成果であると考える。また、防災活動や地域との交流行事については54%が肯定的な回答をしており、地域と学校が連携した活動が少しずつ活性化していると捉えている。


グラフ1防災学習生徒アンケート(H26年実施)

1そう思う 2どちらかいえばそう思う 3どちらかといえば う思わない 4そう思わない 5わからない

 

(2) 新たな学校防災教育の推進

@防災教育年間指導計画の見直し

26年度は「見える化」から「つなぐ化」を目指して、年間指導計画の改訂を行った。各教科・領域において、防災教育と関連が深い内容を精選して年間指導計画を作成した。また、「311副読本」「高砂中防災ノート」との関連も計画に位置づけることで、副読本のより効果的な活用を図る工夫を行った。

特に今年度は、地域の防災活動や学校行事と連動した防災学習を年間指導計画の中に位置づけ関連性が分かるように工夫したことが大きな特徴である。例えば旅行的行事(5)の前や、防災訓練、(6)、小中合同引渡し訓練(10)の前に全校一斉防災学習を位置づけ、学校行事や防災活動と関連した授業実践を行った。また、実際の訓練がより効果的に生かされることを目的に、学校で起こりうる危険と身の守り方などの学習を取り入れた。さらに、復興プロジェクトや国連防災世界会議との関連性を意識した学習を年間指導計画の中に位置づけた。

  また、学習教材の工夫については市民協働による地域防災推進実行委員会が作成した「仙台発そなえゲーム」を導入した授業実践、クロスロードゲーム「地震が発生・・あなたならどうする」など、ゲーム的要素を取り入れながら地震発生時の緊急対応や、日常的に準備しておかなければならないモノなど、多角的な面で防災学習を進めることができた

                                 「仙台発そなえゲーム」による学習の様子



メニュー



具体的な取組



今後の取組



平成26年度 新たな学校防災教育モデル校 取組の概要

copyright (c) Takasago Junior High School All rights reserved.

高砂中学校 新たな学校防災教育
本文へジャンプ