昨年度まで研究してきた「児童のわかること・できること」と評価の在り方をもとに,さらに,学習内容の系統性を踏まえ,単元全体を見通した評価計画を明らかにして,運動の特性を追求し,学習内容を整理する。その上で,運動の楽しさを味わわせるために児童の学び方の具体的な学習過程を工夫し,検証する。
【視点】
課題解決に取り組ませる中で運動の楽しさや喜びを味わわせるための 学習過程の工夫
「自ら学び,運動の楽しさや喜びを味わえる体育学習を求めて」
〜学習過程の工夫をとおして〜
○課題解決に取り組ませる学習過程とは
児童の学びを教師のPDCAサイクルのようにとらえ,単元をとおして発展的に繰り返されていく一連の学習活動である。
始め どのように教材と出合い,運動を体感し,自らあこがれや目標,ゴールのイメージを持つ。
中 めあてを達成するために技能を習得し,気付き,考え,関連付けて取り組むことである。
終わり 振り返り,また新たな課題やめあてに向けて学びを繰り返し,運動をとおしてわかったりできたりする。
6 各地区の研究の概要
地区
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研究主題に迫るための手だて |
取り上げた領域 |
授業研究 |
1 |
@ 動きの体感を取り入れた、PDCAサイクルを踏まえ た学習過程の工夫 |
ゲーム
ボールゲーム |
八木山小
1学年 |
<○ 学習指導案 ○ 学習カード> |
2 |
@ 児童自らが考えるきっかけを与える発問の工夫
A 児童が活動への見通しを持ち、また自分の成長を実 感できる学習カードの工夫
B児童の意欲を高める学習過程の工夫
C言語活動の充実
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陸上運動
ハードル走 |
広瀬小
5学年 |
<○ 学習指導案 ○ 学習カード> |
3 |
@ 目標が分かり、自分の体力の高まりが実感できるよ うな学習カードの工夫
A楽しみながら何度も繰り返し運動したくなるような場の 設定
B多様な方法で問題解決できるような教材・教。の工夫 |
体つくり運動 |
北仙台小
4学年 |
<○ 学習指導案 ○ 学習カード > |
4 |
@ 運動の特性や魅力の捉え直しを生かした単元計画 の作成
A学習の見通しを持ち、運動のポイントを理解できる指 導の工夫
B学びの成果を共有する振り返りの工夫 |
ゴール型ゲーム
サッカー |
燕沢小
4学年 |
< ○ 学習指導案 ○ 指導計画 ○ 振り返りカード> |
5 |
@ 関わり合いを意識させた学習過程の工夫
A 動きの変化を引き出す言葉かけの工夫
B 児童が見通しをもって活動できる工夫 |
表現運動 |
榴岡小
6学年 |
<○学習指導案 ○学習カード> |
6 |
@ 運動の楽しさやwびを味わわせる学習過程の工夫
A 自ら課題解決に取り組ませることができる学習カード の工夫
B運動量を確保するための授業の工夫 |
ネット型ゲーム
プレルボール |
古城小
3学年 |
< ○ 学習指導案 ○ 学習カード > |
7 |
@ 自ら学ぶ学習カードの工夫
A 充実した言語活動の工夫
B わかるための、できるための導入やスモールステップ の工夫 |
体つくり運動 |
柳生小
5学年 |
< ○ 学習指導案 ○学習カード> |
現代社会は,新しい知識・情報・技術が,政治・経済・文化をはじめ,社会のあらゆる領域の基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる「知識基盤社会」の時代であるといわれている。このように新しい価値観があふれ世界のグローバル化が加速する社会において,確かな学力,豊かな心,健やかな体の調和を重視する「生きる力」は,より実効性のあるものとして発揮できるよう求められている。そのためには,児童が自ら自分の知識・技能を生かし,他者のものとを関連づけて,新しい知識・技能を習得するとともに,協働して解決し,あらたなものを創造し学んでいくことが重要である。近年,児童を取り巻く生活様式や環境が大きく変化し,体力の低下を招いている。また,運動に積極的にかかわる子とそうでない子の二極化もその影響を大きく受けている。そのため,全体的には体力や個人差の拡大も見られ,アンバランスな運動能力を持つ児童が増加している。学校体育をとおして児童が運動をする楽しさや喜びを味わえられるようにし,一人一人の運動に対する意欲や技能,体力を高めていくことが必要である。
学習指導要領における体育科の目標として,「心と体をより一体としてとらえ,適切な運動の経験と健康・安全についての理解を通して,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てるとともに健康増進と体力の向上を図り,楽しく明るい生活を営む態度を育てる。」と記されている。また,「仙台市健やか体の育成プラン」では,3つの視点「健康に関する児童・教員・保護者等の意識の向上」「健康や体力向上に向けた効果的な取組の実践」「健康づくり を推進する体制の構築」が示されている。仙台市の現状と課題として,運動施設の制限や日常 的に運動する機会の減少,体力や体育に対する意欲の低下等が懸念されている。
このようなことから,児童が自らめあてを持って運動に取り組んだり,課題を解決したりして学んでいくこと,すべての運動領域において適切な運動経験をすることが求められている。加えて,どの児童にも運動の楽しさや喜びを味わわせることができるようにすると共に一層の体力の向上を図ることが大切である。そのためにも,指導過程や指導方法,指導体制を工夫した体育学習の実践と運動の日常化を図るための環境整備が重要であると考える。
課題解決を図る学習過程には,学びを促し,学びを深める多様な要素が様々な場面で存在する。 導入の工夫,個人・グループ・クラスなどの学習形態や運動の取り上げ方,発達段階に応じため あての持たせ方,学習カード,場の設定,教材・教具の工夫,技能の習得のさせ方,気付き,見 合い,振り返りなど多様な要素を運動の特性や児童の実態に応じて学習過程をどう組み立てるか 研究したい。具体的には,児童が自ら学んでいく姿を引き出すために,運動の特性にふれる時間 を十分に確保しながらどの児童にとっても楽しい体育の授業の在り方を追究したい。あわせて, 運動の態度・情意面にも注目し,運動における心と体の関係性を児童に気付かせるなどして運動 と保健学習との関連についても深められるようにする。
学習指導要領の趣旨を踏まえ,学習過程の工夫をとおして,自ら学び,運動の楽しさや喜びを味わえる体育学習にの在り方を探る。
自ら学ぶ」姿とは
教師の指導により,児童一人一人またはグループが自ら意志決定した「めあて」に向かっ て取り組んでいる姿である。そして,自主的・自発的に多様な方法で課題を解決したり関連 付けたりし,協力して運動に取り組む姿である。
「運動の楽しさや喜び」を味わっている姿とは
運動の特性にふれ,わかったりできたりする運動をとおして,進んで何度も運動やその活 動に取り組んでいる姿。
本研究会では,平成24年度から,研究主題を「児童のわかること・できることを大切にした体育学習の在り方」と設定し,授業実践を重ねてきた。7つの地区がそれぞれに研究主題に迫るための手立てを設定し,これまで整理してきた児童の体育学習における「わかること・できること」を基に,児童の学習の姿を見とり研究を深めてきた。指導者は,運動の特性や魅力を十分に踏まえ,それらをどのように児童にわからせ,できるようにさせるのかという道筋について,学習内容の系統性を踏まえ,評価の在り方を明らかにし,評価と連動した学習カードの開発をしてきた。
・昨年度の研究で見えてきた主な課題
○どの児童も楽しめる体育学習の在り方
○かかわり合いのある学び方
○体育学習における運動量の確保の仕方
○運動の質の追究
○運動の日常化