平成24年度 研究の概要

 現代は,新しい知識・情報・技術が,政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す,いわゆる知識基盤社会であると言われている。このような知識基盤社会や世界のグローバル化が加速する現代社会において,確かな学力,豊かな心,健やかな体の調和を重視する「生きる力」を育むことがますます重要になってくる。
児童の体力については,低下傾向が問題となり,運動する子どもとそうでない子どもの二極化傾向が深刻な課題となっている。学習指導要領における体育科の目標として,「心と体をより一体としてとらえ,適切な運動の経験と健康・安全についての理解を通して,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てるとともに健康の保持増進と体力の向上を図り,楽しく明るい生活を営む態度を育てる。」と示されている。また,仙台市の教育の最重点事項の一つとして「健やかな心と体の育成」が掲げられ,指導方法や指導体制を工夫した体育授業を実践することと運動の日常化を図る環境づくりを行うことが大きな目標となっている。このことを受け,小学校では,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を培うという観点から,児童が各種の運動の楽しさや喜びを味わうことができるようにすると共に,すべての運動領域での適切な運動経験を通して,一層の体力の向上を図ることが大切であると考える。

(2)これまでの研究から

地区
研究主題に迫るための手だて 取り上げた領域 授業研究
1   @ 動きを体感できる指導過程と評価の工夫
 A かかわりを大切にした学習形態の工夫
 B 運動の特性に応じた補強運動の工夫
走・跳の運動遊び 八木山南小
2学年
  ○ 学習指導案(pdf)    ○ 学習カード(pdf) 
2   @ 学ぶ喜びを味わうための「視覚的に見える」授業
   づくり
 A 友達を認め,互いに教え合い高め合いながら活動
   する子
 B 自分にあっためあてを持ち,運動に取り組むことが
   できる子
体つくり運動 中山小
5学年
  ○ 学習指導案(pdf)    ○ 学習カード(pdf) 
3   @ 楽しく体を動かせる題材提示の工夫
 A 子どもの思いや願いを生かした指導の工夫
 B 児童の関心ややる気を高める評価の工夫
リズムダンス 館小
4学年
  ○ 学習指導案(pdf)    ○ 指導計画(pdf)    ○ 学習カード(pdf)  
4   @ 学習内容の系統性を踏まえた単元計画の作成
 A 学習の見通しを持ち,運動のポイントを理解できる
   指導の工夫
 B 協同的な学習を促す評価の工夫
ゲーム
ゴール型ゲーム
旭丘小
4学年
 ○ 学習指導案(pdf)  ○ 指導計画(pdf)  ○ 本時の指導(pdf)  ○ 学習カード(pdf)  
5   @ 評価をより意識した指導計画の作成
 A 人との関わりを通した評価の工夫
 B 学習カードや学習資料を通した評価の工夫
器械運動
鉄棒運動
向陽台小
4学年
 ○ 学習指導案(pdf)    ○ 学習カード(pdf) 
6   @ 児童の実態に合わせた易しくわかりやすい段階的
   な指導の工夫
 A 児童の到達度を的確に見取る評価方法の工夫
ボール運動
フラッグ
フットボール
遠見塚小
6学年
  ○ 学習指導案(pdf)  ○ 学習カード(pdf)  ○ 作戦(pdf)  ○ 記録カード(pdf) 
7   @ 指導目標を明確にした学習過程の工夫
 A 効果的なポイントの提示や言葉がけの工夫
 B 「わかる」から「できる」につながるための教材や教
   具の活かし方
体つくり運動 袋原小
5学年
 ○ 学習指導案(pdf)    ○ 学習カード(pdf) 

3 研究目標

4 研究主題の捉え方

5 各地区の研究の概要

1 研究主題

 本研究会では,昨年度までの2年間「生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎をはぐくむ体育学習を求めて」という研究主題を設定し,児童の体力向上を目指し,研究実践を行ってきた。7つの地区の研究実践を通し,児童の生きる力を育むために体育科に求められることとして,児童がわかったり,できたりすることがとても重要であることを共通理解してきた。そのため,昨年度は,「児童のわかること・できることを大切にした授業の工夫」という副題を設定し,研究の焦点化を図ってきた。各地区毎に「児童のわかること・できること」の捉えについてよく吟味され,各地区の研究の独自性が深まったと言える。地区研究での授業実践を通し,児童がわかったり,できたりすることを繰り返し経験していくことで,運動を楽しいと感じ,学習への意欲が高まり,基本的な動きや技能を身に付ける児童が増える結果につながった。
 また,具体的な授業の工夫については,数多くの取組が見られ,多くの成果が確認された。授業づくりのポイントとして「指導計画・評価の工夫」「教材・教具の工夫」「児童同士の教え合い」「教師の適切な言葉がけ」「学習カードの工夫」「運動の日常化」「補強運動の工夫」などの共通した取組が見られ,一定の成果を上げることができた。

「児童のわかること・できることを大切にした体育学習の在り方」
- 指導と評価の工夫を通して -

2 主題設定の理由

(1)体育科における課題から

 生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育むためには,児童の運動意欲を高め,楽しく運動に取り組ませることが大切であると考える。児童がわかったり,できたりすることを積み重ねていくことで,運動の「楽しさ」を感じ,結果として体力の向上を図ることができると考える。そのため,指導者は,運動の有する特性や魅力を十分に踏まえ,それをどのように児童にわからせ,できるようにさせるのかという道すじについて,授業実践を通して明らかにしていくことが大切であると考え,研究主題を「児童のわかること・できることを大切にした体育学習の在り方」と設定した。生きる力を育む体育学習の在り方については,様々なアプローチの仕方があるが,本研究会としては,児童のわかること,できることを一番大切にしていきたい。また,わかること,できることの捉えについては,昨年度の地区研究の取組から,かなり共通性が見られたことから,今年度は以下のように定義づけすることとした。

 学習指導要領の趣旨を十分に踏まえ,児童のわかること,できることを大切にした体育学習の在り方について,授業実践を通して明らかにする。