平成20年度  校 内 研 究  <仙台市立黒松小学校>


◆1

研究主題

「表現力・コミュニケーション力を高める指導方法の工夫」(2年次)


◆2 主題設定の理由 (1) 教育の今日的課題から
 21世紀は知識基盤社会の時代であると言われ,新しい知識・情報・技術の価値が高まり,グローバル社会に対応した表現力やコミュニケーション力の重要性が増してきている。このことを踏まえ,平成23年度から全面実施される新学習指導要領においては,言語環境の整備と言語活動の充実が求められている。すなわち,習得した知識・技能を活用して課題を解決するためには,思考力や判断力に加えて表現力やコミュニケーション力が不可欠であり,こうした学習活動の基盤として言語に関する能力の育成が重視されているのである。このように,「表現力・コミュニケーション力」を高めることは,教育の今日的課題となっている。

(2) 本校の教育目標から
 本校の教育目標である「創造的な知性,豊かな情操,健康な体を養い,未来を切り拓く力を備えた児童を育成する」の達成と,めざす児童像「進んで学ぶ子ども」「互いを思いやる子ども」「健康でたくましい子ども」の具現化を図るために,学習や生活の基盤となる「表現力・コミュニケーション力」を重視して共同研究を推進する。このことは,教員の指導力の向上と教育活動の活性化にもつながるものと考える。

(3) 児童の実態から
 メディアの多様化や情報のディジタル化が急速に進んだ今日,ネットいじめや携帯電話に関するトラブルが社会問題化するなど,児童を取り巻くコミュニケーション環境は大きく変化している。昨年度,全校児童を対象にした意識調査を行った結果,「自分の気持ちを相手にわかりやすく話せるか」と「みんなの前で自分の考えを発表できるか」の設問で,高学年になるほど「そう思う」と答えた児童に減少傾向が見られた。そこで,児童が自主的・自律的に学び合いに参加して創造的な知性を育み,よりよい人間関係を築きながら互いを思いやる豊かな情操を養っていくためにも,「表現力・コミュニケーション力」を高めていくことが大切になると考える。

(4) 教師の願いから
 子どもたちは,テレビやゲーム,インターネットなどから手軽かつ興味本位に情報を得ている反面,自分の思いや考えを表現することや他者とのコミュニケーションを面倒に思い嫌う傾向にある。「表現力・コミュニケーション力」を高めていくことにより,自分と異なる意見であっても謙虚に受け止め自分の考えを常に修正しながら議論に参加し,集団の中で互いを認め合い高め合える子どもを育んでいくことができると考える。

以上の設定理由により,本主題を設定した。


◆3 研究の基本的な考え方


(1) 「表現力」とは
 表現者(児童)の内面に生じた認識・思念を,感覚的にとらえられる手段・形式によって,外面に表す力。
(2) 「コミュニケーション力」とは
 言語主体(児童)同士が,言語及び非言語メッセージの交換により相互に影響し合い,情報や思考,感情などを共有しつつ目的を遂行する力。


◆4

研究のねらい

 指導方法の工夫を通して,児童の表現力やコミュニケーション力を高めていけるような学習活動の在り方を探る。


◆5
研究の視点
(1)
「表現力・コミュニケーション力」を教科・領域に応じて高めるための指導方法について検討する。
(2)

「表現力・コミュニケーション力」を系統的に高めていくための指導方法について検討する。


◆6 研究の内容 (1) 授業研究
@全体での研究授業は,年2回実施する。事後の授業検討会を含めて,全職員が参加する。
A一人一研究授業を行う。指導案の配布と授業参観の呼びかけは,全職員にする。

(2) 児童の実態や変容の調査
@全校児童対象の研究に関する意識調査を実施し,研究に役立てる。
A児童の実態調査については,学年又は個人ごとに実施する。年度の初めと終わりに行い,児童の変容が明らかになるようにする。

(3) その他
@教材研究
 原則として毎週木曜日を研修日とし,研究に関する話し合いや教材研究を随時行っていく。
A校内研修会
外部講師を招いて研修会を開き,学んだ内容を日々の授業実践に生かす。
B文献研究
 書籍やインターネット等で研究に役立つ情報を収集し,活用する。
C研究紀要の作成
 実践の記録と研究の成果・課題について,研究紀要にまとめる。


◆7 各学年の研究
1 年 : 算数的活動を通して (PDF)


2 年 : 個人研究 (PDF)


3 年 : 国語科「話す・聞く」の学習を通して (PDF)


4 年 : 国語科「話す・聞く」の学習を通して (PDF)


5 年 : 国語科「話すこと・聞くこと」における「書く活動」を取り入れた指導 (PDF)


6 年 : 学び合い,高め合う学習活動を目指して (PDF)


情報・算数 : 学び合い認め合い高め合う学習活動を目指して (PDF)


算 数 : 算数の授業を通した「表現力」と「コミュニケーション力」の育成 (PDF)


特別支援 : 日常生活の指導(朝の会)を通して (PDF)


ことばの教室 : ことばの教室における表現力・コミュニケーション力を高める支援のあり方 (PDF)



◆8 研究の成果 (1) 学びの環境を整える
場の設定の工夫
・発表用ホワイトボード(A3サイズ)や移動式ホワイトボードの複数利用は,児童の考えが伝わりやすく,学習の場ですぐに生かせた。
・お互いの顔が見え司会者が中心になるような机の配置や広い多目的室の利用など学習活動の場の設定を工夫することで,ペアやグループでの話し合いに集中して取り組むことができた。
・児童同士が関わり合う学習場面を意図的・計画的に設定することで,コミュニケーションが活性化し学び合いが深まった。

学習形態の工夫
・ペア学習やグループ学習,ディベートなどを取り入れたことで,自分の考えを持って意見を交換したり,相手のことを思いやりながら学びを深めたりしている姿が見られた。
・教科の特性により学習グループを構成することで,教え合いや学び合いが活発になり,学習内容に応じた効果が見られた。
・算数の少人数グループでは,個に応じた指導・支援が容易にでき,児童も安心して発表や話し合いができた。

掲示物の工夫
・聞き方や話し方のポイントを教室に掲示することで,すべての学習場面で聞いたり話したりする時のめあてを意識させることができた。

(2) 学びの意欲を高める
題材や学習過程の工夫
・問題意識を高めるような題材を工夫することにより,児童が自分の思いや考えを明確にし,伝えたい気持ちを高めることができた。
・学習過程の中に児童が自分の言葉で説明したり学習感想を発表したりする機会を意図的に多く設けることで,表現することへの抵抗感が減り,自分の思いをはっきりと表現できるようになった。

ワークシートの工夫
・学習のねらいに沿ったワークシートを工夫することで,児童は自分の考えを整理し,自信を持って発表することができた。
・話型を書いたカードや簡単な台本の活用は,発表や話し合いの仕方,手順などを学ぶのに有効であった。
・自己評価カードや他者評価カードを活用することで,プレゼンテーションのスキルを高めていくことができた。

(3) 学びの日常化を図る
スピーチ
・朝の会や帰りの会でのスピーチを継続することで,自分の思いや考えを恥ずかしがらずに発表できるようになった。
・場に応じた声の大きさや語尾を意識した発表の仕方が身に付いた。
・スピーチの経験回数が増す度に語彙が増え,話の内容にも広がりが見られた。
・話の組み立てで,5W1Hを意識するようになった。
・聞き手はしっかり聞いて,質問することを習慣化することができた。

読み聞かせ
・毎日,帰りの会で本の読み聞かせを続けたところ,人の話を自分のこととしてしっかりと聞き,その場に応じた反応を示すようになった。

メモ
・国語でメモの取り方を習得し,理科の実験・観察や校外学習等で活用できた。


◆9 研究の課題 個の変容を把握できる評価方法や学習シートの工夫
個に応じた指導・支援の工夫
めざす児童の姿の共有化
目的や視点が明確で児童の思考を促すワークシートの工夫
話し方パターン等スキルの系統化
グループでの話し合いを深める司会の役割の重要性
前年度研究の生かし方
他教科や日常生活との関連
学校全体での共通指導
学級の雰囲気づくり
言語環境を整えるための家庭との連携


◆10 おわりに  次年度は,3年次研究のまとめの年として「変容の明確化」を目標に掲げ,児童の変容した姿をしっかりと見取っていきたいと考えている。そのためには,これまでの実践事例の蓄積を生かしつつ,新学習指導要領の主旨を踏まえての各教科・領域を通じた言語活動の充実が欠かせない。これまで2年間の研究を通して得られた成果や課題をもとにして,研究の視点をより焦点化・具体化して創意ある教育実践に努め,児童の変容をより明確にできるように研究に取り組んでいきたいと考える。

 ※研究紀要版「研究のまとめ」 (PDF)
 ※表現力・コミュニケーション力の学年系統表 (PDF)
 ※場面ごとのコミュニケーション目標 (PDF)

1年4組全校授業の様子

5年2組全校授業の様子

校内研修会(東北福祉大学・上條晴夫先生)

校内研究全体会(ポスターセッション)