平成19年度 校 内 研 究 <仙台市立黒松小学校> |
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◆1 |
研究主題 |
「表現力・コミュニケーション力を高める指導方法の工夫」(1年次) |
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◆2 | 主題設定の理由 | (1) | 教育の今日的課題から | ||||||||||||
メディアの多様化・ディジタル化が進み,活字離れや国語力の低下,言葉の乱れ,他者とのコミュニケーションの不足などが深刻化している。文化審議会答申「これからの時代に求められる国語力について」(平成16年2月3日)では,「言葉によって多様な人間関係を構築することのできる『人間関係形成能力』や目的と場に応じて『効果的に発表・提示する能力』は,現在の社会生活の中で強く求められている能力の一つであるが,これらの根幹にあるのもコミュニケーション能力であり,国語の力である。」と述べられている。このように,「表現力・コミュニケーション力」を高めることは,教育の今日的課題となっている。 |
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(2) | 本校の教育目標から | ||||||||||||||
本校の教育目標「創造的な知性,豊かな情操,健康な体を養い,生きる力を備えた児童を育成する」の達成と,めざす児童像「進んで学ぶ子ども」「互いを思いやる子ども」の具現化を図るために,学習や生活の基盤となる「表現力・コミュニケーション力」を重視して共同研究を推進する。このことは,教員の指導力の向上と教育活動の活性化にもつながるものと考える。 |
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(3) | 児童の実態から | ||||||||||||||
本校では昨年度まで「確かな学力を身につけさせるための指導法の改善」をテーマに,算数少人数指導・習熟度別指導,教科担任制の研究を5年間積み重ねてきた。その結果,本校独自の算数指導システムの確立と授業の質的改善が図られ,標準学力検査(CRT)の結果等から児童の確かな学力の向上を確認することができた。 そうした中,自分の思いや考えを適切に表現したり,友達や先生との良好な人間関係を構築したりすることが苦手な児童の存在が,新たな課題として浮かび上がってきた。 そこで,児童が自主的・自律的に学び合いに参加して創造的な知性を育み,よりよい人間関係を築きながら互いを思いやる豊かな情操を養っていくためにも,「表現力・コミュニケーション力」を高めていくことが大切になると考える。 |
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(4) | 教師の願いから | ||||||||||||||
子どもたちは,テレビやゲーム,インターネットなどから手軽かつ興味本位に情報を得ている反面,自分の思いや考えを表現することや他者とのコミュニケーションを面倒に思い嫌う傾向にある。 「表現力・コミュニケーション力」を高めていくことにより,自分と異なる意見であっても謙虚に受け止め自分の考えを常に修正しながら議論に参加し,集団の中で互いを認め合い高め合える子どもを育んでいくことができると考える。 以上の設定理由により,本主題を設定した。 |
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◆3 | 研究の基本的な考え方 |
(1) | 「表現力」とは | ||||||||||||
表現者(児童)の内面に生じた認識・思念を,感覚的にとらえられる手段・形式によって,外面に表す力。 |
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(2) | 「コミュニケーション力」とは | ||||||||||||||
言語主体(児童)同士が,言語及び非言語メッセージの交換により相互に影響し合い,情報や思考,感情などを共有しつつ目的を遂行する力。 |
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◆4 |
研究のねらい |
指導方法の工夫を通して,児童の表現力やコミュニケーション力を高めていけるような学習活動の在り方を探る。 |
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◆5 |
研究の視点 |
(1) |
「表現力・コミュニケーション力」を教科・領域に応じて高めるための指導方法について検討する。 |
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(2) |
「表現力・コミュニケーション力」を系統的に高めていくための指導方法について検討する。 |
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◆6 | 研究の内容 | (1) | 授業研究 | ||||||||||||
@全体での研究授業は年1回実施する。事前の指導案検討会と事後の授業検討会を含めて全職員が参加し,要請訪問として実施する。 A一人一研究授業を行う。指導案の配布と授業参観の呼びかけは,全職員にする。 |
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(2) | 児童の実態や変容の調査 | ||||||||||||||
@全校児童対象の研究に関する意識調査を実施し,研究に役立てる。 A児童の実態調査については,学年又は個人ごとに実施する。年度の初めと終わりに行い,児童の変容が明らかになるようにする。 |
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(3) | その他 | ||||||||||||||
@教材研究 原則として毎週木曜日を研修日とし,研究に関する話し合いや教材研究を随時行っていく。 A文献研究 書籍やインターネット等で研究に役立つ情報を収集し,活用する。 B研究紀要の作成 実践の記録と研究の成果・課題について,研究紀要にまとめる。 |
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◆7 | 各学年の研究 | ![]() |
1 年 : 算数的活動を通して(PDF) |
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2 年 : 国語科「聞く・話す」の学習を通して(PDF) |
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3 年 : 国語科「話す・聞く」の学習を通して(PDF) |
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4 年 : 国語科の学習を通して(PDF) |
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5 年 : グループによる話し合い活動を通して(PDF) |
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6年1組 : 自己肯定感を高める取り組みを取り入れながら(PDF) |
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6年2組 : 自分なりの思いや考えをもち,人とのやりとりを楽しむ子どもの育成(PDF) |
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6年3組 : 相手の立場を考え,自分の意見を伝える子ども(PDF) |
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理科・情報 : 学び合い認め合い高め合う学習活動を目指して(PDF) |
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算 数 : 算数の授業を通した「表現力」と「コミュニケーション力」の育成(PDF) |
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すみれ・なのはな : 音楽科の合同授業を通して(PDF) |
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ことばの教室 : 事例研究を通して(PDF) |
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◆8 | 研究の成果 | (1) | 学習形態の工夫 | ||||||||||||
・ペア学習やグループ学習,ディベートなどを取り入れたことで,自分の考えを持って意見を交換したり,認め合い励まし合いながら学びを深めたりしている姿が見られた。 ・算数の少人数グループでは,個に応じた指導・支援が容易にでき,児童も安心して発表や話し合いができた。 |
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(2) | 場の設定の工夫 | ||||||||||||||
・教室での移動式ホワイトボードの複数利用や机の配置,多目的室での学習など,学習活動の場を工夫することで,グループの話し合いに集中して取り組むことができた。 ・学習感想による振り返りの場面を設定することで,自分の思いをはっきりと発表できるようになった。さらに,発表を通してお互いの発表の方法や考え方の良い点を認め合えるようになり,児童同士の交流も深まった。 |
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(3) | ワークシートや学習カード・評価カードの工夫 | ||||||||||||||
・学習のねらいに沿ったワークシートを活用することで,児童は自分の考えを整理し,自信を持って発表することができた。 ・話型を書いたカードや簡単な台本の活用は,発表や話し合いの仕方,手順などを学ぶのに有効であった。 ・自己評価カードや他者評価カードを活用することで,プレゼンテーションのスキルを高めていくことができた。 |
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(4) | メモの取り方の工夫 | ||||||||||||||
・要点をまとめながらの書き方や短い言葉に置き換える書き方の練習を行うことで,次第にメモを取ることに慣れて抵抗なく書けるようになった。 |
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(5) | 掲示物の工夫 | ||||||||||||||
・聞き方や話し方のポイントを教室に掲示することで,すべての学習場面での聞く・話す時のめあてを意識させることができた。 |
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(6) | 日常的な活動の工夫 | ||||||||||||||
・朝や帰りの会のスピーチで,テーマや時間を限定したり,サイコロトーキングや新聞記事を活用したりすることで,自分の思いや考えを恥ずかしがらずに発表できるようになった。また,聞き手はしっかり聞いて質問することを習慣化することができた。 ・日記や詩のたね探しなどを続け,生活や自然など自分の周りのことにも目を向け,友だちと共感できるようになった。 |
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◆9 | 研究の課題 | (1) | 指導事項(スキル)の具体化・系統化 | ||||||||||||
教師と児童が共に身につけるべきスキルを明確に認識することで,日々の学習を通して着実にレベルアップを図ることができると考える。児童用のスキルチェックカード作成や教室掲示も有効であろう。実際の指導にあたっては,相手意識や目的意識をはっきりさせ,何のために表現するのかといった学習の見通しを児童にきちんと持たせることが大前提となる。なお,新学習指導要領(改訂案)をもとに研究主任が作成した「表現力・コミュニケーション力の学年系統表(案)」を,次年度研究でさらに吟味・検討し,実際に具体的学習場面で活用できるものに修正・改善していきたい。 |
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(2) | ワークシートや学習カードの工夫と効果的活用 | ||||||||||||||
ワークシートや学習カードについては,今年度も学年ごとに工夫したものを作成し,実際に使ってきた。それらを生かしつつ,次年度はさらに学習内容に合った効果的な活用を目指していきたい。その際,要請訪問からも学んだように,児童にとって過度の負担になったり思考を狭めたりすることのないよう,教材研究に根差したワークシートや学習カードの作成を心掛けていきたい。それと同時にノート指導を見直し,児童自身が普段からノートを工夫・活用できるようにしていくことも必要であると考える。 |
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(3) | 意図的・計画的な学習場面の設定 | ||||||||||||||
単に児童が活発に発言している授業をよしとするのではなく,児童同士が関わり合う学習場面を意図的・計画的に設定していくことが,真に表現力やコミュニケーション力を高め発揮させることにつながるものと考える。つまり,他者と意見や感想を交流する学習場面を設定することで,自分の知識の確かさや考えの立場について児童自ら確認でき,知識や考えを自己修正することが可能となるのである。さらに,対話の質の向上を図ることで,自ら課題を発見し,話し合いによって自ら解決の方策を見出せるような学習集団へと高まることが期待できる。また,教えることは最大の学習でもある。ペア学習やグループ学習,ジグソー学習など学習形態を工夫し,児童同士が教え合う学習場面を学年に応じて意図的に設定していきたい。 その際,グループの人数やメンバーの組み合わせ等にも配慮したい。4人グループで発言に消極的だった児童が,3人グループだと積極的に発言するようになるケースも見られる。また,児童の実態を十分に把握した上で,生活班とは別に教科・領域によって柔軟に学習グループを構成することも必要であろう。また,教師はとかく効率性を求め,児童の学習活動を急がせる傾向にある。児童が落ち着いて自由な発想ができるように学習環境を整え時間を保証すること,すなわち思考のための沈黙の時間(待つこと)を大切にしたい。そうして多様な考えが出ることにより,学びの深まり・広がりが期待できる。 |
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(4) | 評価規準・評価方法の明確化と自己評価能力の向上 | ||||||||||||||
評価を指導に生かすためには,単元全体や単位時間ごとの評価規準を作成し,指導事項(指導課題)を明確にすることが何より大切である。その上で,単元に応じて評価チェック表を作成・活用し,形成的評価を指導の改善に生かすよう努めていきたいと考える。また,児童の自己評価に関しては,学びを振り返らせ,自己の課題を明確にさせるような自己評価カードを活用したい。学習内容によっては,相互評価を取り入れることも有効であろう。なお,児童自身の中に評価規準が確立されていないと,自己評価での過大評価や過小評価が起きることがあるので,注意が必要である。 |
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(5) | 日常的な活動の工夫 | ||||||||||||||
日常的な活動の工夫については,今年度の取り組みと同様,朝の会や帰りの会でのスピーチ,スキルタイムの活用などが考えられる。特に,コミュニケーション力の向上のためには,学級づくりが土台となる。コミュニケーションは,お互いを大切に思うことで成り立つものである。担任は,受容的態度と要求的態度のバランスをうまく取りながら,学級集団の学びの質を高めていく必要がある。そのためには,教師自らが手本を示すことである。よき聞き手であるためには,受容的態度で児童が満足するまで話を聞いてあげ,その後で児童自身が考えを整理したり改めたりできるような質問や声がけをするとよい。また,よき話し手であるためには,教師の声がけを児童がどう受け止めるかを想像しながら,適切な言葉を選んで話すことである。その際,児童が教師を受容できていることが前提となる。信頼がなければ,教師の声がけは全て児童の警戒心や反発を招くだけのものとなる。「言葉遣い」を「心遣い」ととらえて,目や態度・表情で言葉を相手の心に届けることを大切にしたい。 |
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なお,4月実施の仙台市標準学力検査については,国語の「話すこと・聞くこと」領域の校内平均正答率が3〜6年生で期待正答率と全国平均正答率を上回り,概ね良好な結果が得られた。今後も,次年度以降の検査結果を指導改善の一助とし参考にしていきたいと考える。 |
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◆10 | おわりに | 言葉は,自分の思い通りにはなかなか伝わらないものである。誤解を生まないためには,言葉で伝えることの限界を認識した上で,言葉を省かずきちんと伝えることを心掛けることである。また,心を耕すことで,共感できるようになる。すると,相手の言葉の先が読める。このことが,相手を意識し心の通い合った双方向のよりよいコミュニケーションへとつながる。体験や読書など,児童の内面が磨かれ豊かになるような促しをぜひ大切にしていきたい。 今年度の研究を通して明らかになった課題をもとに,次年度は指導の手立てをより明確にできるよう研究に取り組んでいきたいと考える。 ※研究紀要版「研究のまとめ」(PDF) |
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